オヤジの闘病回想記

ブログ「猫と杖とキャンピングカーと」に登場する1956年生まれのオヤジが約40年前に大怪我をし、躰の自由を奪われ人生観が激変、現在に至るまでの葛藤を綴った記録です。

リハビリテーションはじまる

前方固定の手術から1週間してからF氏がポータブルレントゲンを引き連れて現れた。
少し話をしてから、仰向けで1枚レントゲン撮って帰って行った。

それから1週間間隔でレントゲンを撮って、1ヶ月したところで、S助教授とF氏が現れ「明日からベッドでリハビリをはじめます。」と言われた。

翌日、午前中ベッドに理学療法士の方が現れた。
中年の男性で上下白の衣服で少し甲高い声で私の名前を呼んだ。
〇〇さん今日からリハビリを担当するMです。
私もよろしくお願いします。と挨拶を交わし、
全身に感じる痛さや痺れの状況を説明したがM氏には、どれほどのものかは伝わってはいないようだ。

M氏はベッドに横たわる私のコルセットから出ている両腕の肘、手首、各指の関節の動き、硬さ、角度などをこまめに調べて記録し同様に両脚の股関節、膝、足首、各指の関節の動き、硬さ、角度など調べて記録していた。
打腱器で肘や膝を叩き反応を診たり、柄の部分で手の平や足の平など擦り反射を診て記録していた。

ひととおり調べが終わると、私の右腕に白い粉を振りかけ、M氏は自身の手の平を私の腕の肩当たりから手首まで擦りながら往復させていた。10回ほど往復させると、次は左腕、右脚、左脚、と筋肉を解すようなマッサージが行われた。
次に手首、足首、肘、膝の関節と両手、両足の指い一本、一本を屈伸させていたが、流石に各関節の動きが硬く、特に足首はかなり硬いらしいことを、M氏の表情から察することが出来た。

リハビリをひととおり終わらせると「また明日同じ時間に来ます。」と告げ去って行った。

私は中学生の頃、右手首を骨折した経験がある。
2カ月のギブス固定で、手首の屈伸の痛さは知っていたが、今はリハビリで手や脚の関節を屈伸させても、何をやられても痛みを感じない。触られている事すらもわからない。

怪我する前に感じていたあの躰の感覚は、何処に行ってしまったのか?
手脚が曲がっているのか、伸びているのか、肘や膝の位置なども、目で見ないとわからない。
暖かいタオルで躰を拭いてもらうが、その暖かさや擦ったりしてることがわからない。
氷嚢などの冷たさも、どこにあてているのかもわからない。
点滴の針を刺しても、場所も痛みもわからない。

なのに頚損特有の全身のジリジリ、ビリビリ、チクチクは感じるという、異常な感覚麻痺が継続していた。

私はまた、怪我する前の自分の躰を思い出していた。

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