オヤジの闘病回想記

ブログ「猫と杖とキャンピングカーと」に登場する1956年生まれのオヤジが約40年前に大怪我をし、躰の自由を奪われ人生観が激変、現在に至るまでの葛藤を綴った記録です。

10分限界、ママチャリ通勤

スーツを着て、何時ものように駅に向かう清々しい朝であったのに、駅までの中程まで来たところで、お腹が痛くなり嫌な思いが頭をよぎるのであった。

昨年も通勤途中のこの道でお腹が痛くなり駅にたどり着く前に漏らしてしまい、その後の処理をしながら惨めだったことを思い出したのであった。

また、あの惨めな思いは二度としたくなかったのである。

このまま駅に向かうか寮に戻るか。
寮の方がまだ近いので、戻ることにしたのであった。

寮まで何とか、もってくれるだろうと自分を信じ、自分を励まし、私に出来る精一杯の早足で歩いて帰ったのであった。

歩きながら、ひたすら願うしかなかったのであった。「何とか、持ってくれ~」と。

あの角を右に曲がれば、100m先に寮がある、寮に入って一番近いトイレまでの順路を浮かべながら、頭の中では既にトイレにたどり着いていたのであるが、現実は寮まで遙か遠くに感じる所を早足で歩いていたのであった。

が、時折我慢できないほどの痛みが下腹部に現れ、擦りながら立ち止まり両目を強く閉じては、見開き痛みが治まるのを待ちながら、こういうときに走ることが出来れば、どんなにかいいだろうと想像しながらも必死に堪えるしかなかったのであった。

腹痛は時間との闘いであることは、自分自身が一番知っていたのであった。

やがて痛みが治まり、また早足で歩くしかなかったのであった。

やっと角をまがったところで、猛烈な波が襲ってきたのである。

寮までは残り100mなのに・・・

ここまで来て、なんでという思いと、頼むから何とか堪えてくれと願うしかなかったのであった。

脂汗というか、ねっとりした汗がこめかみから首筋へと伝うが、痛みが倍増し、遂にその時がきたのであった。

「あぐ~っ」の嗚咽とともに・・・身震いしながら

脱糞してしまった。

しかもかなり軟らかめで、最悪であった。

このスーツは買ったばかりなのに、クソまみれにはしたくなかったのだが、何で今日に限って、このスーツを着てしまったのか、紺地にピンストライプのお気に入りの1つだったのに、後悔するばかりであった。

寮に戻り、そのまま自室に入りゴミ袋を広げ汚れたズボンと肌着を入れ、後始末をしたのであった。

部屋は臭く窓を全開にし惨めな思いをしながら一服したのであった。

幸いなことに寮では誰とも鉢合わせになることが無かったことがせめてもの救いであった。

後始末の後、改めて会社に向かう気力は無く、休むことにしたのであった。

寮で自活し始めてから2度も同じ事を繰り返し、もう惨めな思いはしたくなかったのであった。

会社を休んだ日にどうするか考えて導いた結論は、急な腹痛に対応するために、徒歩から自転車に変えたのであった。

腹痛を感じると、時間との闘いである。
一刻も早くトイレに駆け込める移動手段を手にしたかったのであった。

これまでの経験で、お腹が痛くなって10分程度が限界であった。

歩く速度や肛門の締め付ける括約筋の強さなどから
10分以内にトイレにたどり着ければ惨めな思いをしなくてすむ、という考えであった。

また、この頃は駅までの徒歩が辛いときもあり寮から駅までが 、楽になるのは火を見るより明らかであった。

駅前の自転車店でママチャリという前後輪が小さい、サドルにまたがって両脚が余裕で足がべったりと就く自転車を購入したのであった。

翌朝からは、快適に駅までの走ることが出来たのであった。

これで「いつでもお腹が痛くなっても、惨めな思いや、お気に入りのスーツを汚さずに快適に通勤出来るようになった・・・」と意気揚々であった。



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