オヤジの闘病回想記

ブログ「猫と杖とキャンピングカーと」に登場する1956年生まれのオヤジが約40年前に大怪我をし、躰の自由を奪われ人生観が激変、現在に至るまでの葛藤を綴った記録です。

頚髄損傷の膀胱炎

手術後4ヶ月過ぎコルセットを装着しながら、ベッドに仰向けでリハビリを受けていた。

四肢の各関節の可動域や柔らかさは、リハビリを始めた頃に比べかなり改善されていると理学療法士のM氏が口癖のように言っていた。

ただ握力は数百グラム位か、計測器では計れずM氏と握手する形で、M氏の感覚で数百グラムという程度ものだった。

両腕の曲げ伸ばしは、腕を持ち上げることはできず、仰向けの状態で敷き布団の上を擦らせながらがやっとできた程度であった。
両肩は仰向けで、コルセットの前側を外した状態で上下に動かせるようになっていた。

両脚については、実際には動かないが、指、足首、膝、股関節で脳から一番遠い位置にある指に狙いを定めグーパーを繰り返し行っていた。

素人考えで脳から一番遠い指に指令が伝達すれば途中にある足首、膝、股関節はやがて動くのではないかと、単純思考でグーパーを繰り返すしかなかった。

神経はそんな単純なものではなく、複雑怪奇な回路図となっているだろうが、この時は単純な配線図をイメージしながらグーパーを繰り返す方が何も考えず継続する力となった。
そもそも、医学の高度な話をされても理解できないし、実感が湧かなかった。

この頃、朝から微熱が続いていた。
朝の検温で看護師さんから、そう告げられた。

その日の午後にF氏の回診があったが、尿検査の結果、膀胱炎であると言われた。
主に大腸菌などの細菌が尿道を通り、膀胱に侵入して炎症を起こす。健常者でもストレスや疲労などから免疫力が低下し細菌に抵抗できず発症するとのことで薬が処方された。

また膀胱炎は再発しやすいので、菌が繁殖しないよう1日の尿量が1,000~1,500mLになるように水分摂取を行い、尿と一緒に細菌を体外へ排出するようにとの指示が出た。

回診後から尿量を意識し、水をとるようにした。
はじめは、看護師さんやヘルパーさんにその都度介助してもらいながら飲んでいたが、ナースボタンが押せないので、通りかかったときに呼び寄せて水を飲んでいた。だが、いくらも飲めないので飲水器を作ってもらった。

ボトルに栓をしてもらい、栓に1m位のΦ8~5のチューブを貫通させ枕元に置いてもらった。
そのチューブをコルセットの肩口と口元にテープで固定してもらって、チューブの端を口に含み、好きなタイミングで水を飲めるようにした。
飽きるとお茶やジュースなども入れ替えてもらって、この時期が人生で一番水分を摂っていた。

バルーンカテーテルからの尿は水のように澄んで量も多く、どれだけ排尿できるのだろうか?知的好奇心が騒ぎ半端なく飲水した結果、最高で3リッターほど出ていたが、さすがにこの試みは飲水しすぎで気持ち悪く、吸飲(力)も半端なく辛くかったので、目標を2.0リッターにし馬鹿げた試みはやめた。
たが、自身の膀胱で膨満感や残尿感を感じることは出来なかった。

その後何度か尿検査を実施し、大腸菌の量は基準値に入るようになり、鬼のような飲水は、ほどほどに抑えていた。



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