オヤジの闘病回想記

ブログ「猫と杖とキャンピングカーと」に登場する1956年生まれのオヤジが約40年前に大怪我をし、躰の自由を奪われ人生観が激変、現在に至るまでの葛藤を綴った記録です。

羽ばたけるのか?

車椅子で病室からリハビリ室まで自力で移動できるようになった頃から、コルセットを装着し歩行器を使い、リハビリ室内と屋外の平坦な場所で歩行するリハビリが始まった。

はじめた頃はM氏が、見守りで付き添い5分歩いて30秒ほど立ったまま休むを1セットとし3セット行い、他のリハビリはマットやベッドで電子機器等も使っての施術であった。

入院当初、ベッドで寝たきりの時に、車椅子で移動する患者さんを羨ましく思い、車椅子で移動できるようになると、歩行器で歩く患者さんを羨ましく思い、歩行器で歩けるようになると、杖だけで歩く患者さんを羨ましく思っている自分は、ここを退院するときは、杖なしで歩いて退院することを思いながら、リハビリに精を出していたのだった。

自分でも何処まで貪欲な人間なんだと思っていたのであった。

14ヶ月前、自分の躰が突如、動かなかった感じなかった状況から始まった人生の迷い道。
絶望の中、自問自答した入院生活。

同じ頚損患者を知り、客観的にその症状や実態を理解し、自分になぞらえ、やがて時間の経過と共に、私は運が良かった。と思い知ったのである。

同じ頚損という病名でも全然違う症状となり、
私は、不全麻痺で、障害をある程度を補完することが出来ていたが、運が悪いと完全麻痺となり、一生動かせない躰になってしまう。
そんな患者さんが3人もいたのであった。

まさに奇跡的な紙一重だったのだ。

怪我する前に思い描いた将来設計が木っ端微塵に白紙になり、あの日から14ヶ月で、何とか歩行器で歩けるようになったとはいえ、何処まで回復するか判らない躰と将来残された時間も判らず、どんな将来を描けるだろうか?

兎に角、この時は歩行器を使わず歩くことを目指すしかなかった。

いつか羽ばたける事を信じて。


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