夢でサーカディアンリズムが狂う
24歳の夏。暑い夏。
私は、新規プロジェクトに参画し東奔西走で走り回っていた。
会議に使う資料をワープロを駆使しながら作成していると、背中越しに私を呼ぶ声が聞こえてきた。
振り向いても誰もいなかった。
私がまたワープロに向かうと、また呼ばれた。
忙しいのに、誰なんだ!?
少しするとまた、女性が私を呼んでいた。
段々その声が近づいて来た。
名前を呼びながら肩をポンポンと・・・
直ぐに、また名前を呼ばれ、視線を移すとそこに・・・看護師さんが・・・立っていた。
なんで看護師さんがいるの・・・
看護師さんが「検温ですよ」と言ったが
なんで・・・急いで資料を作らなきゃ・・・
暫くして・・・・
今のは「夢なのか?」と・・・
私は、茫然としていた。
脈と体温をひと通り書き込むと、看護師さんが「汗かいてるから、着替えましょうか」と・・・
私は、まだ無言で動揺しながらも着替えさせてもらったが・・・まだ混乱していた。
着替え終えると、夢の中で走っていた私と、ベッドにいる自分の姿に現実が襲ってきた。
正気に戻り、昨日まであんなにあったリハビリに対するモチベーションは、消え失せて無くなっていたのである。
かなりへこんでいた。朝食も完食出来ず。
ベッドを倒してもらい、目を閉じ、猛烈な不安とやるせなさに、涙が止まらなかった。
クッソ~ッ。と大声で叫びたかった。
昼になり、昼食も完食出来ずに、リハビリがはじまったがやる気が出ない。
M氏も悟ったのかリハビリを早めに切り上げ、まだ行ったことがない屋上に車椅子を押して行ってくれた。
屋上に出ると夏空で眩しかった。
そこから見える町並みや人や車の往来をぼんやり眺め、暫くしてから、病室まで車椅子を押してもらった。
病室に戻り、いつものように看護師さん達にオムツからのT字帯、尿瓶を整えてもらいベッドで仰向けに、夕食がくるまでボーッとしていたのである。
その日の夜は眠ることが出来なかった。
目を閉じていたが、眠れなかった。
深夜、頻繁に看護師さん達が小走りに廊下を行き交い、その足音もあってか寝れなかったのである。
朝の気配に目を開けるとカーテン越しに朝日があたり、暫くすると朝の検温が始まった。
あの夢を見た日の夜から寝れなくなり、暫く自力で立ち直りを試みるが上手くいかず、担当医のF氏にお願いし誘眠剤を出してもらっていた。
この頃は昼夜逆転した最悪の入院生活をしていたのであった。
孤独で長い夜は眠れなかった。
完全に体内時計が狂ってしまったのである。