オヤジの闘病回想記

ブログ「猫と杖とキャンピングカーと」に登場する1956年生まれのオヤジが約40年前に大怪我をし、躰の自由を奪われ人生観が激変、現在に至るまでの葛藤を綴った記録です。

夢でサーカディアンリズムが狂う

24歳の夏。暑い夏。

私は、新規プロジェクトに参画し東奔西走で走り回っていた。
会議に使う資料をワープロを駆使しながら作成していると、背中越しに私を呼ぶ声が聞こえてきた。

振り向いても誰もいなかった。

私がまたワープロに向かうと、また呼ばれた。

忙しいのに、誰なんだ!?

少しするとまた、女性が私を呼んでいた。
段々その声が近づいて来た。

名前を呼びながら肩をポンポンと・・・

直ぐに、また名前を呼ばれ、視線を移すとそこに・・・看護師さんが・・・立っていた。

なんで看護師さんがいるの・・・

看護師さんが「検温ですよ」と言ったが

なんで・・・急いで資料を作らなきゃ・・・

暫くして・・・・

今のは「夢なのか?」と・・・

私は、茫然としていた。

脈と体温をひと通り書き込むと、看護師さんが「汗かいてるから、着替えましょうか」と・・・

私は、まだ無言で動揺しながらも着替えさせてもらったが・・・まだ混乱していた。

着替え終えると、夢の中で走っていた私と、ベッドにいる自分の姿に現実が襲ってきた。

正気に戻り、昨日まであんなにあったリハビリに対するモチベーションは、消え失せて無くなっていたのである。

かなりへこんでいた。朝食も完食出来ず。

ベッドを倒してもらい、目を閉じ、猛烈な不安とやるせなさに、涙が止まらなかった。

クッソ~ッ。と大声で叫びたかった。

昼になり、昼食も完食出来ずに、リハビリがはじまったがやる気が出ない。
M氏も悟ったのかリハビリを早めに切り上げ、まだ行ったことがない屋上に車椅子を押して行ってくれた。

屋上に出ると夏空で眩しかった。
そこから見える町並みや人や車の往来をぼんやり眺め、暫くしてから、病室まで車椅子を押してもらった。

病室に戻り、いつものように看護師さん達にオムツからのT字帯、尿瓶を整えてもらいベッドで仰向けに、夕食がくるまでボーッとしていたのである。

その日の夜は眠ることが出来なかった。

目を閉じていたが、眠れなかった。

深夜、頻繁に看護師さん達が小走りに廊下を行き交い、その足音もあってか寝れなかったのである。

朝の気配に目を開けるとカーテン越しに朝日があたり、暫くすると朝の検温が始まった。

あの夢を見た日の夜から寝れなくなり、暫く自力で立ち直りを試みるが上手くいかず、担当医のF氏にお願いし誘眠剤を出してもらっていた。

この頃は昼夜逆転した最悪の入院生活をしていたのであった。

孤独で長い夜は眠れなかった。

完全に体内時計が狂ってしまったのである。


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